魔女簡易説明


 魔女になるということは、魔力を獲得する手段として悪魔と契約を結ぶことである。魔術士の能力が高ければ対等か、悪魔を服従させる契約を結ぶこともできるが、普通は人間が悪魔に服従する契約を結ぶ。魔女術は中世に隆盛期を迎えたが、成立の契機はキリスト教の恩恵を受けられない弱者の夢を具現化したものであるため、徹底してアンチ・クリストの立場を取っており、キリストを否定することを近い、偽りの洗礼を受ける。

○魔女のサバト

 別名、カシン(coven)。カヴィンは、修道会(コンヴェント)と同じ語源から生まれた言葉で、集会を意味する。魔女の大集会(サバト sabbath ヘブライ語で休息の意味)が有名だが、満月の晩に集まるエスバト(Esbat 小集会)もある。年八回開かれ、

12月 冬至
2/1 2/2 オイメルク(聖燭祭)
三月春分の日 エオストル(豊穣祭)
4/30 ベルティン(メーデーの前夜祭)
6/21 夏至祭
8/1 収穫祭
9月 秋分
10/31 ハロウィン

墓地、教会などに集まる。魔女12人+悪魔一人=13人

 順番に悪魔の尻にキスをする。キリスト洗礼の逆(穢れた水を使うなど)で悪魔の洗礼をし、代償をささげる。悪魔は爪で魔女の体に傷をつける。魔女の印(ウィッチズ・サイン Eitchs sign)と呼ばれる。

 地下世界の王者、貴方の黒い書物、死の書物に私の名前を書き入れてください。貴方の為に犠牲を捧げることを誓います。


そして乱交パーティが行われ、魔術を伝授される。


○魔女裁判

 13世紀までは魔女は疎まれながらも安泰に過ごす14世紀に南フランスで起こったアルビ派、ヴァルドン派という反ローマ・カトリック教会の動きがあった。当時のカトリック教会が腐敗していたからだ。それに驚いたカトリック教会はアルビ、ヴァルドン両派を異端とし、審問を行った。その際、魔女、民間信仰、土着宗教、ユダヤ教もつぶsれた。やがてスケーブゴート狩りに発展し、隣人、美人、老婆、貧者なども狙われた。14〜18Cに殺された人間は30〜300万人で、最後の魔女裁判は1791年イタリアで行われた。

 魔女が空を飛ぶのはホウキである必要はなく、樫で作られた杖状のものなら桑でもモップでもいいらしい。

 未開の地域で民間療法や呪術で病気を治す人をウィッチドクターという。魔女のルーツも欧州でキリスト教が広まる以前のウィッチドクターで、怖いが頼れるという両義性が、悪魔信仰と結び付けられ、魔女狩りでは多くの人が殺された。



○魔女狩り

 キリスト教が本格的に魔女狩りを行うようになったのは14世紀になってから。魔女狩りがもっとも盛んになるのは16〜17世紀である。ルネサンス(文芸復興、文化活動の総称)が15世紀の事である。職業別に見ると魔女とされた人は産婆や羊飼いなど、要するに薬を使う、一人きりでいる人が狙われた。乾草を摘んだ荷車をひっくり返す、娘を下着無しで躍らせる、などの魔法を使ったとされたと言われる。

 魔女を捕らえるためなら噂や密告だけでも逮捕でき、拷問にかけて自白させても良いとされた。拷問には三段階あり、まず予備拷問、そして本格拷問、最終段階がある。予備段階で自白しても、法廷記録には「拷問によらず自白」と記録された。魔女として火刑にされた者の財産は没収できるため、魔女狩りは儲かる一大事業でもあった。しかし、こんな魔女像は妄想で、強い禁欲を強いられる聖職者にとっては性的描写の多い魔女狩りはポルノ同然であった。


○古き魔女 Witch

 ではまるっきり魔女はでたらめだったのだろうか? いや、キリスト教の魔女イメージの基盤となったイメージは実在する。
それは太古の巫女で、ドルイド教やその他の異教の巫女達で、地母神や豊穣神をまつっていた。キリスト教の不況により古い神は崇拝されなくなったが、生活に薬草の知識は役立ったし、民間信仰として根強く残った。自然崇拝を行うために森に向かうことが多い。季節の節目を重視し、太陰暦で一年を半分に分ける区切りの日、5/1と11/1が祭りの日である。10/31〜11/1は魔力の日とされ、キリスト教にもハロウィンとして取り入れられた。


○古き魔女の魔法

 自然を重視するアニミズム、シャーマニズムの考え方を持つため、豊穣など、素朴なものを望んだ。

占い  占星術のような複雑なものではなく、水占いや炎占い、亀甲占いなど、中世にはすでに時代遅れとされていたものを使っていた。金持ちや権力者にアピールせず、田舎の貧しい農民達などを占うことが多かった。
豊穣の祈り  デルメルやバッカス(大地母神と酒の神。どちらも大地から生える植物神)などの豊穣神に、作物や家畜の豊作、多産を祈った。その裏返しで不作や不妊を起すとされた。
お守り  中世ヨーロッパの田舎では家畜や人を襲う害獣はオオカミだった。したがってオオカミから身を守るお守りを作った。時代が下がるにつれてお守りの範囲は拡大し、疫病避けや火事避けなどのお守りも魔女が作るようになった。



○現代の魔女 Wicca

 古き豊穣神の巫女を主張する人々。この運動を新異教主義(ネオ・ペイガニズム)という。20世紀まで魔女を禁止する法律は残っており、1944年に魔女禁止違反で処刑される人がいた。これをきっかけに、本来の魔女とはどういうものか見極めようとする運動が高まった。
 現代の魔女宗教はディアナ、デルメル、フレイアなどの大昔の地母神、豊穣神を崇拝するもので、現代のフェミニズム(女権拡張思想)とも近い関係にある。そして自然保護運動などとも近い。彼女らはWiccaと呼ばれ、善なる白魔術のみ使うといわれる。