四方髪(よもがみ)の術


 一人の人間を4人に見せるため、頭部の周囲に四つの面をつけ、わざと歩哨に立たせるという込み入った変化術もあるが、このような方法も忍術では四方髪と称している。が、この術の内容は、忍術組織は一箇所に全力を投ずるよりは、二箇所三箇所と複数の組織を持った方が良い、という事を主張していると考えるのが本格的である。

 自己の支配下の全勢力を一つの組織に収めればその組織は強くなるが、いったんその組織が発覚して、攻撃を加えられた時にはその組織は壊滅してしまう。分散してあれば、一箇所は壊滅しても他の組織は残るから、壊滅の憂き目に会うことは免れる。つまり危険分散を策しているわけだ。

 また一面、別組織を作っておけば組織同士が表面争う偽態を示して、第三者から単一組織の場合より、より多くの利益を得ることができる。こういう理由から、四方髪の術という秘術が編み出された。この術の要点は、組織内の人間にも、他に兄弟組織があるということを隠し、他の組織を競争組織と思わせておくことである。