リュバン LUBIN
リュパン LUPIN


 リュパンは狼の姿をしており、塀に沿って出現する事が多いフランスの妖精。リュバンはとにかく塀に沿って出現し、ただそれだけの事が多い。月光の輝く夜に道を歩いているとき、道に沿って塀がある場所にさしかかる。この時、じっと塀の方を見ているとそこにリュバンがいる事がわかる。塀に寄りかかるように二本足で立ち、塀が続く限り延々並んでいる。



ニンフ NYMPH


 ニンフは山や木、野、泉、海などに住んでいるギリシャの自然の精霊である。住んでいる環境によって、ドリュアス(樫の木)、ナイアス(泉)、オレイアス(山)、ネレイス(海)などがあり、どれも美しい女性の姿という。彼女達の寿命はその環境と一致している。海のネレイスは不死で、泉のナイアスは泉が枯れると死に、樫の木のドリュアスは木の生長と共に生きる。ニンフは自然の精霊なので、自然を破壊しようとする人間には罰を与える。神聖な森の中では、鉄の斧が木々に触れないように注意しなくてはならないと考えられた。



シルフ SHYLPH
エアリアル ARIEL


 シルフ、エアリアルはヨーロッパの空を流れる風の中に住むといわれる空気の精霊である。シルフは16世紀のヨーロッパの錬金術師がこの世を構成する四大元素の一つである空気の精霊として考え出したものだ。彼女の体は純粋に空気だけでできており、18世紀、19世紀のイメージは小さな羽のついた生物とされた。しかし現在では非常に美しい女性の姿とされ、風をあやつるとされる。特殊な魔法に弱いため、魔法使いの手下にされる事も奥、ある契約のもとに魔術師プロスペローに仕えている話もある。



サラマンダー SALAMANDER


 サラマンダーは16世紀のヨーロッパの錬金術師が、火の中に住んでいると考えた火の精霊である。火山から流れ出た溶岩の中に住むとされた。鉛から金を作り出すために火を用いるが、この火が十分な熱さに達すると、その中にサラマンダーが生まれるとされた。

 しかしそれ以前にヨーロッパではサラマンダーは火の中に住む怪物として有名だった。古い時代から石綿は燃えない布として、西洋でも東洋でも驚異の的だった。人々は理解に苦しみ、それを不思議な生物のせいにした。火鼠、火蛇、サラマンダーという生物が火の中に住んでおり、それらの毛や皮でできていると考えた。ヨーロッパでは石綿布がサラマンダーの皮として売られていた。

 ちなみに、両性類は有尾類と無尾類に分かれ、有尾類はイモリ、サンショウウオ、サラマンダーの三つに分かれるが、この中にファイヤサラマンダーという有尾類が実在し、それがこのサラマンダーのモデルとされる。白い毒液を発射する黒に金の模様の10〜25cmくらいの大人しいサラマンダーだが、湿った所に生息するため、湿った木の洞の中などに住んでいたようだ。この木を火にくべたが、湿っていたため火が中まで通らず、中から生きたサラマンダーが這い出てきたため、火の中に住むと誤解されたようだ。このサラマンダーを実際に火の中に単品で投げ入れた記録が残っているが、白い液を吐き出し消滅してしまったという。



ネック NECK


 ネックは河や湖に住むスカンジナビアの水の精霊。ケルピーのように馬の姿で出現するが、この場合人間がネックを捕らえる事ができれば、馬具をつけて鋤を引かせることで畑を耕す事ができる。美しい金髪の少年の姿で、水面に浮かんでいたり、老人の姿で岸辺にこしかけていたりする。ネックは水の上に浮かんで音楽を奏でるのを得意にしている。特にヴァイオリンやハープの腕前は格別で、その音楽は水の流れや魚、川辺の植物に影響を与えるという。ネックに黒い子羊を一頭捧げれば、人間が演奏の技術を学ぶこともできた。デンマークではネックはネッケと呼ばれたが、この妖精は人を水に引き込んで溺れさせる事もあった。ときどき、ネッケは溺れさせた人間の鼻を吸い、水死体の鼻を赤く腫れあがらせたという。



ローン ROANE
セルキー SELKY


 ローンとセルキーは、本来は人間の姿をしているが、海の中を泳ぐ時はアザラシの皮を着ているとされる。ローンは北部スコットランド周辺の海に、セルキーはさらに沖合いのオークニー諸島やシェトランド諸島周辺の海に住んでいるともされる。ローンもセルキーも、海の中では完全なアザラシとなり、地上では人間の姿になる。アザラシの生活が脅かされた時は、人間に傷ついたアザラシを見せ、訴えかける。漁師が生活のためにアザラシを取るのはかまわないという。これらの妖精は、アザラシの皮を脱げば中は美男美女で、上手く皮を隠してそのまま結婚するという、一種の羽衣伝説が残っている。



アヴァンク


 コーンウェイ河の水溜りに出没する水の魔物。あらゆる生物を深みに引きずり込む。



バンシー


 スコットランドでは「悲しむ小さな洗濯女」、「浅瀬の洗濯女」とも呼ばれるまもなく死ぬ人間の服を川岸で洗いながら泣くとい。人間に捕まったバンシーは死を定められた人間の名を教え、三つの願いを叶えてやらなければならない。



ブンボイ・シー


 人間の血を吸う危険な悪霊。ハイイロガラウかワタリガラスの姿で現れる事もあるが、普通は髪の長い美しい女性の姿で緑の長いドレスのすそを引きずり、鹿の蹄のような足を隠している。



バーゲスト


 ボギービーストの一種。人間の姿をすることもあるが、動物の姿のことが多く、漁村ではバーゲストの葬式はしの前触れとしている。どんな姿をしていても目は燃える石炭ののように赤い。鎖を体に巻きつけガチャガチャと音をたて、鉤爪、角、尾を持つという。



ビリー・ブラインド


 スコットランド、イングランドの境界地方に住むやさしい家憑き妖精。主にバラードに登場し、目隠布をまいている。良い助言を与えるのが最大の役目らしい。



ブラック・アニス


 ひとつ目で青い顔の邪悪な老婆。子羊や幼い子供をむさぼり喰い、ほら穴に住むという。



ボダッハ


 バグベアーやバガブーのスコットランド版。煙突から伝い降りてきて悪い子を捕まえるという。



ブロラハン

 形のないものという意味のゲール語で、通称、骨なしお化け。



カイラック・ヴェーラ


 青い妖婆で、地面を杖でたたきながら歩き回り、周辺を凍らせる。冬を擬人化した妖精であり、春が来て自分の出番がなくなるとムッとして、こんちくしょうと杖を茂みに投げ捨ててしまう。



デビルズ・ダンディドッグ(悪魔の猟犬の群れ)


 黒い猟犬の群れ。火を吐き、目は燃える岩のように光っている。大嵐の夜には、悪魔の供をして、人気のない荒野へ行く。人間を生きたまま八つ裂きにするが、祈っている人間には近づけない。



ドービー


 かなりのおどけ者で間の抜けたブラウニー。ときどき、隠した宝の見張り役にかり出されるが、だまされやすくあまり頼りにならない。



ドラセー


 水の精。木鉢の姿で川を流れていき、女がそれを掴むと本来の姿に戻り、相手を水中にひきずり込んで自分の子供を育てさせようとする。



エルフ


 もとはアングロサクソン語で、どんな妖精にも使っていた言葉だが、やがて特に北欧のライト・エルフのような妖精を指すようになった。スコットランドのエルフはフェアリーに比べると粗野で、よく働くが意地が悪く、人間に優しくないとされる。北欧の小さなライト・エルフは花の世話をするし、大きな欠点といえばイタズラと気まぐれくらいで、全体のイメージはもっと良い。フリント石の鏃をエルフ・ショットといい、丘に住む妖精トロウがその矢を射るのでエルフとトロウは同じとみなされている。



ガブリエル・ラチェット


 ウィッシュ・ハウンズ(人間の魂を狩る妖犬の群れ)に似ている。違う点は、高い空中で狩りをすることと、嵐の夜に吠えること。吠え声は死の前兆とされる。洗礼を受けていない子供の魂で、安らかに昇天できないからとされる。



ガンコナー(言い寄り魔)


 パイプを口にくわえて人里はなれた谷間を歩き回り、若い娘と関係を持つ。関係を持った娘は彼に恋焦がれて死んでしまうという。



グレイスティグ


 女の上半身にヤギの下半身もしくは緑の服を着た背の低い太った女の姿だといわれる。ブラウニー系の妖精の性質はだいたい持っており、子供好きで牛乳をもらい、家事をする。邪悪な面もあり、旅人を迷わせ、殺してしまう。旅人が武器を持っていても武器の名前を聞けば、その威力をなくすことができる。ただしどんな武器かという説明だけをされると負けてしまうという。川岸に座っている姿がたびたび目撃され、通りかかった人に、向こう岸に渡らせてほしいと頼む。とらえられて、ケルピーのように働かされる事もある。



ホブ


 ブラウニーとほとんど同じだが、百日咳を治すことができる。百日咳にかかった子供はホブに治してもらうため、ホブホールに連れて行かれる。そこで親は「ホブホールのホブ!うちの子が百日咳にかかっています、病気を持っていってください!」と呼びかける。



ポーチュン


 夜、群れを成して農家に入り込み、ひと仕事をしてから暖炉の前で休み、夕食用にカエルを料理する。体はとても小さく、顔はしわだらけで、つぎはぎの上着を着ている。ほとんどよいことばかりで悪い事をしない。



シーリー・コート


 シーリー、は祝福された、の意で、いくらか徳の高い英雄妖精。じゃあkなものはアンシリー・コートと言う。



スクライカー


 死の前触れで、足音が静かなのでブラッシュとも呼ばれる。透明な姿で森を歩き、ぞっとするような金切り声をあげる。



ウリスク


 荒っぽいブラウニー。上半身は人間、下半身はヤギ。家にウリスクが棲み付くのはとても幸運で、家畜の番や農作業をやってくれる。人里はなれた滝に出没し、たびたび人間の仲間を欲しがり、夜中に旅人をつけまわし怖がらせたが、危害は加えなかった。



フッピティー・ストゥーリー


 妖精が乗ると信じられていた、ほこりのうずのこと。