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タイトル 私見
投稿日: 2008/03/22(Sat) 23:00
投稿者アレックス

アレッサンドラです。
ヴァンパイアハーフの保護から事情聴取までの経緯と、調書を踏まえた上で私の意見を言わせて頂きますと――

もっとも理想的なものは「尊厳死」です。
これは自らVHGに訪れたという勇気と「これ以上犠牲者を出したくない」「罪を償いたい」という初志を尊重した名誉ある死。吸血の呪われた生を捨て、人間種としての死を選んでもらう―― 平たく言えば、非公開で我々が見届ける中、自害して頂く、という事です。
この場合、我々の仕事は最後を看取り、再び甦る事の無いよう処置し、彼女の安息を祈る事になります。

餌食にされた方々と、それに近しい方々達に対して申し訳ない事この上ありませんが、私は、生まれながらに吸血鬼である事を余儀なくされた彼女に同情を禁じえない。
その人生は我々には計り知れぬ苦悩と苦痛に満ち、「生きる為に仕方が無かった」と自己正当化という欺瞞を抱かずには居られないものであったと思います。
本人の希望であるとしても、できる事であれば、その最後を公衆の面前に晒すような不憫な事はしたくありません。

また、対象の希望である公開処刑は、果たして想定した通りの効果があると思えないのもあります。
ジョージ・マクドゥガルが危惧するように、限られたレンジであるにせよ保護欲を刺激するであろう「薄幸の少女型」であるリリルを厳正な公開処刑という方法で決着をつけるのは、聊か浅慮であると言わざるをえません。しかしながら、拘束を続け極限状態に陥れた吸血鬼による、奴隷捕食の場面を公衆の面前に晒す、という方法も、余りに無残であり、先の理由から気が進まないものである事は確かです。
結論として、彼女には我々が見届ける中、人知れず静かに眠りについて欲しい、というのが私の希望です。
この点は、私の趣味でしかありませんので、上役による命令というよりも参考程度の受け取り方で結構です。

さて、処刑以外の方法・・・ 具体的にはクロアスの提言するヴァンパイアによるヴァンパイアハントの話になりますが――・・・ 職業意識においても、宗教的観念においても正直頭の痛い話ではありますが、彼女が「吸血鬼」という自他ともに致命的な不治の病を憎み、これ以上の犠牲者を出さない事を切に願うのであれば、ありではないにせよ、なくはない話だと思っています。
しかし、良識あるヴァンパイアハンターであれば誰もが思うよう、我々が吸血鬼を葬らないのであれば、我々の存在意義は一片たりとも存在しない。
よって、かなり厳しい話になりますが、私個人としては条件付で賛成できなくもありません。

私の提示する条件は以下の通りです。

・管理対象吸血鬼の人権は一切剥奪され、以降は性別年齢に関わらず対吸血鬼の兵装として運用されること。

・管理責任者を任命し、単一の責任者が対象吸血鬼に対しての全責任を負うこと。

・管理対象吸血鬼の住居及び生活空間はVHG"カーン"地下牢に限定し、必要と思われる拘束具及び「鳥篭」の装着を必須とすること。

・管理対象吸血鬼の私用による外出は一切不可とし、外出は管理責任者と同伴且つ、ヴァンパイアハントに必要と思われる場合に限定すること。

・管理対象吸血鬼の存在は部外秘とし、運用の際にもその素性、特性、外見に至るまで隠匿する事。露見した場合は管理責任者ともども処罰の対象とする。

・管理責任者には週1度のヴァンパイア感染検査を実施し、感染が発見された場合、管理対象吸血鬼とともに死罪とすること。

・管理対象吸血鬼が市民に対し害を及ぼした場合、如何なる場合であっても死罪とする。同様に、管理責任者は損害の賠償責任を負うこと。

・対吸血鬼用吸血鬼の運用にあたり、VHG"カーン"は住居として地下牢を提供する以外の便宜を図らないものであること。

・処遇の決定にあたっては、管理責任者および管理対象吸血鬼、複数名のVHG"カーン"所属ハンターの了承と同意の下で行われるものである事。

上記の条件付きであれば良しとしましょう。
実際に運用する場合にはもっと細かい条件を設けなくてはならないでしょうが、ざっと思いつく限り私からの条件は以上です。
読んで頂ければ理解して頂ける通り、奴隷よりも過酷な運命を与えられる事になるでしょう。
己が生き続けたいが為だけに、捕食対象である人間どころか同類である吸血鬼ですら殺そうというのですから、その業は計り知れません。
私の考える限り、まともな神経であれば耐えられるとも思えませんが、結論を先伸ばしにするだけの材料にはなるでしょう。

一部わかりにくいと思われる部分を補足すれば、管理責任者の負う全責任というのはまさしく全責任の事であり、食料である血液から衣類、あらゆる道具の提供に至るまで、全て、です。
最もシリアスな問題である食事の提供は、報酬で奴隷を飼うなり、自分の血を与えるなり、管理責任者の裁量にお任せしますが、VHG"カーン"はハントの報酬以外は一切提供しない、という意味であり、連帯責任が存在するという意味でも管理責任者の負う責任は非常に重いものです。
不埒を働くものがいるとは考えたくはありませんし、考えるだにおぞましい事ですが、その・・・ ええと・・・ 性交渉も禁止としましょうか。
我々の使命は吸血鬼を葬る事であり、転じて、増やさない事でもあるのですから。

この意見はどんなに厳正な条件をつけたとしても、欺瞞に過ぎません。
しかし、罪の意識から逃れんとする彼女の自己正当化が欺瞞であるように、本質としてこの世のあらゆる正義は欺瞞でしかないように思います。
であるのならば、逃れえぬ結論を先延ばしにする事も許されるのではないか、と思うものです。

今の所、私の意見は以上です。

追記になりますが、対象は同情を誘う特性を備える上に、白魔術には催眠術に似た技法もありますので、取り扱いには十分に気をつけるように。


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