タイトル | : アキ様へ |
投稿日 | : 2005/06/10(Fri) 22:17 |
投稿者 | : ノーマ |
(繊細さを偲ばせる婦人の筆記体、
宵闇色のインクで、明け方色の便箋にこの様に字が舞う。
恋文の形を借りて、逢瀬を申し込むに似せ、
彼の人の胸の内をもう一度見定めようとする計らい。)
初夏の日差しが眩い折、如何お過ごしでしょうか。
冒険者の貴方の事、重き痛手など負っておられぬ事と存じます。
貴方の体が傷付けば、私のか弱い心臓も、止めの一撃を受けるようなもの。
くれぐれもご自愛ください。
-と言いますのも、貴方からの音沙汰もしばし無く、
また私の胸のうちはひたぶるに貴方を思うております。
宜しければ其方の自由な時間がいつといつか、この文に連ね御返事を御願い致します。
お時間は二週先までで如何でしょう。
恋とは又我儘なもの、その初めの難題としては手習いに相応しい申し出とは存じます。
誉れを追う猛禽の貴方と、恋に導かれる渡り鳥のこちら、
相まみえるに相応しい時間を設けるには先だっての連絡が肝心ではないでしょうか。
結びに代えまして、愛しい人。
恋の猛毒が貴方の胸を苦しくするのなら、解毒剤は私の手に御座います。
「N」
(逢瀬の時間を設けてみませんか、という誘い。
彼の奮闘の成果を以ってすれば、
表裏無く実のある逢瀬になるかもしれない。
そのために、二週先までの予定を公開して、逢瀬の都合をあわせましょうと言う、話。)