タイトル | : 節約家の憂鬱 |
投稿日 | : 2009/09/01(Tue) 01:33 |
投稿者 | : 会別理久 |
( 会別理久は普通に生まれて普通に生きてきた。
祖母の素性だとか、両親が新興宗教にハマっているとか、語れることがないわけではないけれど、普通とされる程度の枠組みを破るほどのものはない。 とりあえず本人はそう思っているし、事情を知らない周囲もそう認めるだろう。 だからこれは、人生初の例外だ。
1606年8月31日、両親にくっついて宗教関係のツアーでアングリマーラを旅行していたが、ツアーの用事が長引いてしまい、学業の都合から一足先に帰ることになった。
両親からは十分な運賃を渡されたけれど、こんなの勿体無い。 乗合馬車の安いルートを探し、ヴェイトス市北方の地方村、ウォッシュベアーで一泊することにしてしまう。
宿代差し引いても安く上がるし、旅行にまつわる常識的な危険には注意した上で大丈夫だと判断できた。 ウォッシュベアーという村は知らないけれど、鉱石の産地というのを一目見られるのも悪くない。 お得感があったのに。
父に付き合ったマリンスポーツで焼けてしまった肌が少しヒリヒリする。 あの人はきっと男の子が欲しかったんだろうな、とか。
到着は夜中になってしまった。 濃霧の中を進む馬車で、背もたれに頭を預けるくらい深く腰かけまどろんでいたら―――
背後に、土砂崩れの音を聞いた。 )
【スタンス:脱出】