タイトル | : バイツァ・ダスト(負けて死ね)! |
投稿日 | : 2007/09/19(Wed) 16:36 |
投稿者 | : ちょっとした不幸から |
【事件への導入】
予期せぬ不幸だった。
酒場だったかもしれない。路地裏だったのかもしれない。或いは大通りだったか。
ひょっとすると自宅の前に倒れていたのかもしれない。それはわからない。
だが貴方が出逢ったその男は傷だらけで、とてもではないがそう長くは無いように思えた。
貴方が事情を聞く、聞かないに関わらず、男はぜぇぜぇと苦しげに息を吐きながら告げる。
「これを……これを、奴らに渡さないでくれ……ッ!」
そう言って男は、貴方に何かを押し付けると、身体を引きずるようにして駆け出した。
追われているのだろうか。そう思いながら貴方は受け取った品物を見て、そして驚いただろう。
それは人の身体の一部だったのだ。
ある者は右手、ある者は左足、ある者は脊髄と、それぞれに違うミイラ化した人体の部位。
それが、男が貴方達に押し付けた品だった。
貴方は気味悪がったかもしれない。或いは珍しいものを手に入れたと喜んだかもしれない。
色々な感想を抱きながらも、しかし貴方はそれを手放すようなことはなかった。
……それが、事件の始まり。
ふと道を歩いているとき。職場で働いているとき。眠っているときに、気付いた。
――誰かが見ている。
それが何者かはわからない。
影に日向に潜みながら、しかし誰かが貴方について来る。
そうして貴方は理解した。これが、あの男の言う『奴ら』なのだ、と。
降りかかる火の粉を払うか、それとも逃げ出して何処かへ潜伏するか。
どのような選択をするのも、貴方次第だが……これだけは言える。
『奴ら』は必ずやってくる。
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本日午後、大聖堂前に血塗れの男が倒れているのを掃除中のシスターが発見。自警団に通報した。
男性はすぐに病院へと運ばれるも、出血多量のため、まもなく死亡。
全身に無数の切り傷や刺し傷があり、自警団は殺人事件として調査を開始した。
被害者はピエール・ホーキンズ(35歳)。大聖堂所属の巡回牧師であったが、
一ヶ月前より巡回の旅に出ており、昨夜ヴェイトス市へ帰還したことがわかっている。
巡回牧師の中には他宗教に対する密偵として派遣されることもある為、
ピエール牧師の殺害は諜報行為に対する報復ではないか、という記者の質問に対し、
大聖堂広報官は以下のようなコメントを寄せている。
「ピエール牧師は非常に敬虔な信徒であり、その死は許されるべきではない」
(9月19日 ヴェイトス・シティタイムズ紙 三面記事より抜粋)
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