タイトル | : 「20年前の事件について」 |
投稿日 | : 2008/06/14(Sat) 16:14 |
投稿者 | : 自警団調査資料 |
これは貴方の視覚、聴覚の異常ではありません。
いきなり暗闇に閉ざされて驚かれたでしょう。
ですがご安心を。
これからの時間、貴方の目は、貴方の身体を離れ、
恐るべき真実の目撃者となるのです。
1585年、初夏。
――二人の男女が殺され、
そして一人の男が行方をくらませました。
ロイヤル・アストナージ。
ジャネット・スティングラード。
二人とも、内臓を喪うという恐ろしい死に方でした……。
そして消えた男エドワード・ランディ。
果たして彼は何を見、何を聞いたのでしょう?
事件の背後には恐るべき影が存在していたのです……。
――――貴方の知らない世界へようこそ。
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ツァラトゥストラ劇場1593年公演作品
連続怪奇劇『フロム・アウタースペース』
未使用脚本「大学を覆う影」より。
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二十年前の事件当時、自治権を強く主張した大学側の要請により、
騎士団および自警団は、積極的に関与をする事ができず、
調査資料はおろか、被害者の名前すら記録には残っていない。
しかしながら数年後――つまり1593年。
一人の劇作家が取材を試み、一冊の脚本を仕上げた。
これが現在、唯一残っている文書としての記録になる。
しかしながら、その脚本は日の目を見ることが無かった。
取材の事実を知った大学側からの抗議にあい、
結果、この公演は中止に追い込まれたのである。
また、原稿も残されているのは1枚目のみで、他は喪われてしまった。
脚本は、件の劇作家が常に持ち歩いたのだが、
彼は1600年、取材航海中に大嵐に巻き込まれ、
乗り込んでいた船諸共、海の底へと沈んでしまったのだ。
死者数十名の大惨事で『アラート号事件』として世に知られる事件である。
数名の生存者が救出されたが、全員が発狂しており、
「るりぃえー」や「くるうるう」など、意味不明の言語を呟いているが、
アラート号事件は正確に表現すれば、紛れもない『事故』であり、
即ち大学で見つかった白骨死体との関連性は皆無である。
当時を知る関係者は皆一様に口を閉ざしているが、
劇作家某が「証言を得られた」という事は、話を聞きだす事も可能と思われる。
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尚、この劇に関する噂は、既に大学構内に流布されている。
これもまた変化した『雰囲気』の一つである。